この話は、主人公の勘違いが最後まで続いたまま話のオチがつくという落語のようなお話です。
物語の最初に要約が書かれています。
テーマの設定は素直に
思いちがい 真理
としましょう。
登場人物の変化をとらえる
ここで、物語を読むときに大切なポイントを挙げます。
登場人物の変化をとらえる
登場人物の気持ちや考え方が、物語のはじめとおわりでどのように変化しているかを考えましょう。
登場人物の気持ちや考え方の変化は、たいていその作品の中心テーマにかかわってきます。
もう一度先ほどの引用を見てみましょう。
ここに「真理をさとった」とあります。
最後にどうなるか、答えが書いてありました。
では、わかいドイツの職人がどういう「真理をさとった」のかを読めばいいことが分かります。
こういうときは、わかいドイツの職人の気持ちが書かれているところを書き出してみます。
さとった真理の内容をつかむ
このように抜き出すとはっきり分かります。
はじめ、わかいドイツの職人は
自分のびんぼうをうらみ、お金持ちをうらやましい
と思っていますが、物語の最後には
自分のようなびんぼう人も、ちんぷんかんぷんさんのようなお金持ちも、死んでしまえば同じだ
とさとります。
「わたしみたいなびんぼう人でも、いつかはえられるものです。」
という気持ちからそれが読み取ることができます。
これでわかいドイツの職人がさとった真理の中身が分かりました。
びんぼう人もお金持ちも、死んでしまったらみんな同じ。
という真理です。
読書感想文を書く
では、これをもとに読書感想文を書いていきましょう。
それにしても、「真理をさとる」という体験などは、そうそうあるものではありません。
自分が何かをさとった体験(氷は溶ける、虫は死んだら生き返らない等)を思い返してあれこれ書ければよいのですが、
体験がどうしても絞り出せない場合どうすればよいでしょう?
今回はそんな場合を想定して感想文を書いてみます。
①あらすじ
②登場人物の変化
③テーマ
④感想を少し
という組み立てでやってみましょう。
ほとんど作品紹介のような形になっていますので、こういうタイプの読書感想文を
「作品紹介型」
と名付けておきましょう。
作品紹介型の感想文を書くときは、「物語の組み立て」「登場人物の気持ちや考えの変化」をしっかりとらえて、筋道を立てて説明できるように努力してください。
まず、「きみょうな回り道」と「思いちがい」について説明します。
はじめに、わかいドイツの職人は、アムステルダムの町で大きくてりっぱなお屋敷と出会います。その大きな屋敷は、ちんぷんかんぷんさんのお屋敷だと思いちがいをしてしまいます。
わかいドイツの職人は、
「ちんぷんかんぷんさんというのは、こいつは、とてつもない金持ちにちがいないわい」
と思います。
つぎに、わかいドイツの職人は、港で荷下ろしをしている大きな船に出会います。そして、その荷下ろしされている積み荷の持ち主が「ちんぷんかんぷんさん」であると、また思いちがいをしてしまいます。
そして、わかいドイツの職人は、
「世間には、こんな金持ちもいるのに、自分みたいに、また、なんというびんぼう人もいることだろう」
と悲しんだり
「おれも、せめて一度でいい、あのちんぷんかんぷんさんみたいな、金持ちになれたらなあ」
と思ったりして、お金持ちをうらやましく思い、自分のびんぼうをなげく気持ちになってしまいます。
すると、つぎに出くわしたのがお葬式の列でした。わかいドイツの職人は、それが「ちんぷんかんぷんさん」のお葬式だと、またまた思いちがいをしてしまいます。
このように、大きなお屋敷、船の荷下ろし、お葬式と次から次へと出くわしたことが、「きみょうなまわり道」です。
そして、そのお屋敷や、荷下ろしや、お葬式が、すべて「ちんぷんかんぷんさん」のものだと思いちがいをしています。
なぜ、そんな思いちがいをしてしまったのでしょう。
それは、わかいドイツの職人はオランダ語がよく分からなかったために起こりました。
わかいドイツの職人は、
とドイツ語でききますが、オランダの人にとっては何を言っているのか分からないので、みんな
「ちんぷんかんぷんですわ」
と返事をしたのです。
しかし、わかいドイツの職人は、オランダ語が分からないので
「ちんぷんかんぷんですわ」
と言われた意味が分からず、「ちんぷんかんぷん」がお屋敷の持ち主の名前だと思ったのです。それが思いちがいです。
そして、最後の思いちがいは、お葬式でした。
「ちんぷんかんぷんさん」が死んでしまったと思ったわかいドイツの職人は、次のように言います。
「お気のどくな、ちんぷんかんぷんさん。あなたのたいへんな財産のうち、今のあたなにのこされたものは、何でしょう?きょうからびらにあさのぬの、それにあなたのつめたいむねの上には、おたくにさきこぼれていた美しい花の中から、マンネンコウか、ヘンルーダの花が一本でしょう。わたしみたいなびんぼう人でも、いつかはえられるものです。」
そして、その後にはこう書かれています。
「最後に、かれは、気も晴ればれとみんなといっしょに帰りました」
わかいドイツの職人は、思いちがいがもとで真理をさとりました。
それは、
「びんぼう人も、お金持ちも死んでしまえば同じ」
という真理でした。
この話を読んで、ぼくはわかいドイツの職人に賛成する気持ちにはなれませんでした。たしかに、びんぼう人も、お金持ちも死んでしまえば同じです。あの世にお金は持っていけません。しかし、それでもぼくはお金持ちになりたいと思いました。