
『人間の建設』という本があります。
小林秀雄と岡潔の対談本なのですが、とても味わい深く、
読み返すたびに新たな含蓄を発見させてくれる本です。
この本の最終章のテーマで「素読」が取り上げられています。
お手元に本がない人のために、
『人間の建設』について解説している動画がありましたので、リンクを貼っておきます。
さて、ここからが本編です。
今から25年前、平成10年の10月に、私は国語専門教室を始めました。
はじめは、親のやっているそろばん教室を間借りしながらでしたが、
紆余曲折を経て
「アールズ国語そろばん教室」
として、私の国語教室と親のそろばん教室が合わさりました。
なぜ、はじめに国語専門教室を始めたのか。
それは、算数で感じていた焦燥感に共通しています。
算数に関しては
「算数が苦手な人は、そろばんを習うだけで多くの問題が消える」
と感じていました。
それどころか、そろばんを習わずに算数数学の世界に突っ込んでいくのは、
武器を持たずにモンスター狩りに行くようなもの
とさえ思っています。
同じように
「(算数も含めて)勉強が苦手な人は、国語力を強化すればよい」
と感じていました。
国語・算数・理科・社会・英語
すべての教科の基礎は国語です。
小学生のうち、特に低学年から3~4年生あたりまでは、
ごちゃごちゃと細かいことは気にせず、
国語力の強化に力を入れた方がよいと考えていました。
ところがです。
世の中を見渡してみると、本当の意味で国語力を育てる実践を行っている塾も学校も、ほとんど見当たりません。
学校は、小回りが利かないことが多いのでしょうがないとして、
私がより脱力感を覚えた対象は、学習塾です。
「学習塾こそ、公教育とは違って、自由にやれるはずなのに……」
現実には、見渡す限りの学習塾が、
学校教育に追従するような形で、教科書の補習や、問題集演習、漢字学習に終始しています。
本当の国語力というのは、勉強の基礎体力みたいなものです。
私が当時から感じていた問題点を整理しましょう。
・テストの点数かせぎをやっても、その場しのぎになることが多い。
・問題集を解いても、国語の成績は上がらないし、国語力も育たない。
・問題集を解いて成績が上がる場合、元々国語力を持っていた子が、テストでの立ち回りや解法のコツをつかんだに過ぎない。
「本当の国語力を育てるにはどうすればいいか」
せめて私ぐらいは、この問いに真摯に向き合おうと思いました。
本当の国語力を身につけるにはどうすればよいかについて、私の中には独立当初よりすでに
「そんなもん素読に決まってるやろ」
という答えを持っていました。
素読とは、詩や文をそのまま声に出して読み、意味理解は後回しにする学習方法です。
では、何を素読するのか。
「古典の名作」「文語詩」「和歌」「百人一首」です。
これをひたすら素読することを中心に国語力を鍛えれば、多くの生徒を助けてあげられると確信しました。
しかし・・・・・・
私が確信することと、世間の反応は別です。
「まあ、分かる人にだけ分かればよい。」
そんな気持ちで日々を過ごしていました。
それに、私が広く素読の効用を訴えたとしても、
私自身の指導過程がまだまだ未完成であったため、説得力に欠けるだろうという気持ちもありました。
あれから25年。
四半世紀を経たにしては、相変わらずの発展途上ではありますが、
少しは世間様に向かって
「いかがでしょうか」
と言えるくらいにはなったかなと思わなくもないため、
こうして本音を発信している次第です。
次回に続きます。