算数の文章題が苦手なのは「AI読み」が原因かもしれません

 

「AI読み」とは?

私の過去の記事で紹介しております。

 重要部分を改めて引用します。

P38より引用(色強調は引用者)
日本で育った日本人は、小学1、2年生で(読み障害がなければ)ほぼ全員が簡単な字の読み書きはできるようになります。(中略)むしろ心配すべきなのは、家庭環境や地域によって語彙量に相当の差があることです。
加えて、小学3、4年生あたりで、本や教科書の読み方や、板書の読み方に決定的な差が生まれ始めます。それは、機能語の部分を正確に読む子とそうでない子の差です。
機能語を正確に読みこなせないと、教科書を読んでもぼんやりとしか意味がわかりません。そうすると、暗記やドリルに頼るようになります。
意味を理解しない暗記でも、小テストや中間テストなどはうまく切り抜けることができることがあります。その成功体験とともに彼らは中学に進学します。
そういう生徒は、たとえば歴史の教科書を読むときに、キーワードの群として捉えようとします。
たとえば、「徳川家光、参勤交代、武家諸法度、鎖国」のように。
私は、この読み方を「AI読み」と呼んでいます。AIがまさにそのように読む特性があるからです。

この記述は、長年教室で学習指導をしている私にとっては、目から鱗がボロボロ落ちるものでした。

まさに 「AI読み」としか考えられない現象をこれまでに何百何千と目の当たりにしてきたからです。

では、実際に私が目撃した「AI読み」の場面を紹介したいと思います。

 

もくじ

「AI読み」の例

問題1(小学3年算数・単元「長さ」)
さくらさんの家から学校までの道のりは400m、学校から公園までの道のりは1km800mあります。

さくらさんの家から学校を通って公園までの道のりはどれだけですか。

式) 1km800m-400m=1km400m

                     こたえ 1km400m 

私の教室で私が目撃した実例です。

正解は足し算で求められますが、

この生徒は文章題の中の「1km800m」「400m」という数字だけを主に読み取り、

その長さが何を意味しているのか。

さくらさんの家、学校、公園の位置関係がどうなっているのか。

それらのことを読み取っていないことが分かります。

数字のみを見て、

「大きい数」と「小さい数」があるので、

「大きい数」から「小さい数」を引き算してみればなんとなく正解しそうだ

そんな感覚で問題を解いている可能性が濃厚です。

まさに「AI読み」の一種です。

こうした生徒が、「AI読み」をやめずに高学年になるとどういうことが起きるかみてみましょう。

問題2(小学5年生算数・単元「割合」)

180Lはいる水そうに144Lまで水を入れました。入れた水の量は水そう全体の何%ですか。

式) 180÷144=1.25
                    答え 125%

という具合です。

完全に「AI読み」しています。

正解は、144÷180ですが、この問題の場合、割られる数割る数を逆にしても割り切れてしまうという巧妙な罠が仕掛けられていて厄介です。

わり算は「大きい数」÷「小さい数」になるだろうという先入観もあいまって、

「もとにする量」「くらべる量」「割合」の関係をとらえることが全くできていないためにこうした間違いが起こります。

しかし、高学年になればなるほど、割られる数よりも割る数の方が大きいなんてことはざらにあります。

問題が示している数量の関係や意味を読み取らない「AI読み」では完全に詰んでしまいます。

まして中学生に上がれば、数量は文字で表されることが多くなり、抽象化が進み、ますます手も足も出なくなります。

では、こういう症状にはどんな対処をすればよいでしょうか。

 

「AI読み」をする生徒への対処法

算数の文章題でつまづいている場合

まずは問題を音読することは基本中の基本となります。

生徒に音読させるだけでなく、指導者も問題を音読してあげるとよりよいでしょう

そして、問題が示している数量の関係がよく分かるように図や絵を描いてあげます。

図や絵は、生徒の腹に落ちるまで、何回でも何十回でも描いてあげます。

「前にも描いてあげたじゃない」

などと言うのは禁句です。

代わりに

「分かるまで何度でも描いてあげるから大丈夫」

とか言いながら描くといいでしょう。

しかし、算数の文章題でつまづいている生徒は、読解力に問題を抱えている場合がほとんどですので、算数の文章題を繰り返すだけでは対処療法の感が否めません。

根本的に「AI読み」をやめるような方向に持っていく方が、一見遠回りでも確実です。

 

「AI読み」を根本的に解決するには

読解力は、つまり「読み書きの力」ですから、さながら筋力トレーニングをするように「読み書きの力」を継続的に鍛えるより方法はありません。

時間がかかりますし、かなり地道な取り組みとなりますが、実はこれが最も確実です。

具体的には、「音読すること」「書き写すこと」から始まって、文法的なことも含めた「ことばの使い方」を練習していくことになります。

我田引水的な話で恐縮ですが、私が作成した国語教材はそのためにあります。

「暗誦教材」「漢字テスト(四字熟語)」「作文ワーク」「国語の鍛錬」などの教材を日常的に学習することで、じわりじわりと生徒の「読み書きの力」が向上してゆきます。

これらの国語教材については、この記事で詳しく解説しております。

私の教室に通えないという方は、さくらぷりんとに教材の一部を公開しておりますので、ご利用いただければと思います。

「一部を公開」というのは、何も出し惜しみをしているのではなく、単に時間的・物理的制約によるものです。

最終的に、私がこれまでに作成した教材はすべて公開してかまわないと考えています。

また、「国語の鍛錬」「作文ワーク」に関しては、解説動画を今後作成していく予定ですのでどうかご期待ください。

 さくらぷりんとで公開中の国語教材

まとめ

「AI読み」を放置したまま高学年に進んでしまうと、上に挙げた例以外にもいろいろと困ることが起きてしまいます。

読解力=読み書きの力をじっくり鍛える時間は、幼児~小学生時代しかありません。

勉強は中学高校大学だけでなく、その後の人生でもずっと続くものです。

目先のテストに一喜一憂することなく、長期的視野に立って子供の学力を伸ばすことが大切なことは言うまでもありませんが、この記事が皆様のご参考になれば幸いです。

 

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