先日、読書感想文の書き方について記事を書いたところ、大変好評をいただきました。
そこで、もっと他の作品を取り上げて読書感想文の文例を紹介できればと思いました。
読書感想文の書き方は、1つではありません。
今日は、自分の体験談を広げる方法『ボンヤリ・クッキリ法』を紹介しながら、進めていきます。
取り上げる作品は『たぬきのダンス』(あさのあつこ)です。
あさのあつこと言えば『バッテリー』が有名ですね。
もくじ
たぬきのダンス どんな作品?
ちなみに、この要約は200字ぴったりで書いています。
「なぜ200字なの?」
気になる方はこちらの記事も参考にしてください。
桃子と瑞希という2人の女の子が出てきます。
桃子が中心人物で、瑞希は友達です。
2人でたぬきを助けるのですが、瑞希のところにはダンスを見せてくれたたぬきが、桃子のところには現れません。
瑞希はそのことを嬉しそうに語りますが、
くやしく思った桃子は、瑞希に思わず
「うそつき!」
と言ってしまいます。
せっかく仲良くなれた瑞希という友達を失いたくない桃子ですが、あやまる勇気が出ません。
学校の帰りに川原に1人たたずむ桃子も前に、たぬきが現れてダンスをおどります。
瑞希ちゃんに、そう言おう。あやまろう。
桃子は、走りだす。瑞希ちゃんの家まで、走れば5分だ。力いっぱい、走ろう。
川辺で、すすきがやさしく、風にゆれていた。
物語の最後は、このように結ばれています。
この物語のテーマを考えましょう
私がこの作品を生徒に指導するとき、必ず辞書で調べてもらう言葉があります。
「葛藤」です。
「葛藤」とは、検索するといろいろな意味が出てきますが、分かりやすく言うと「迷い、悩むこと」です。
小学校4年生に分かるような説明をいたします。
「いちごケーキにするか、チョコレートケーキにするか」
これは迷っている状態です。「悩む」はちょっと違います。
「練習しているのに、なかなかタイムが縮まらない」
何の練習をしているか分かりませんが、これは「悩み」と言っていいでしょう。
「迷う」と「悩む」が同時にやってきたとき、「迷い悩む」となり。一言で言うと「葛藤」になります。
桃子は、
「あやまらないといけない。でも、できない。ゆるしてくれなかったらどうしよう」
という心境でいます。
まさに、「あやまろうかどうしようか」迷っているところへ、「あやまって、ゆるしてくれなかったらどうしよう」という悩みがかぶさって、葛藤のお手本のような状態になっています。
こうした登場人物の葛藤は、物語の中心テーマになることが多いので、私は4年生で「葛藤」という言葉を教えます。
さて、ではこの物語のテーマは
「あやまる勇気」
ということにしましょう。
ラストシーンでは、実際に桃子が瑞希にあやまる場面は描かれていません。走りだす場面で終わっています。
そこがまたあさのあつこの上手さでもあるのですが、このラストシーンのおかげで、この作品で感想文が書きやすくなっている要素があります。それについては後で触れます。
中心テーマが「あやまる勇気」になりましたが、もう1つテーマを見つけましょう。
物語のはじめ、3年生の頃に桃子がクラスの女子からムシされていたことが書かれています。
「あたし、そんな話、おもしろくない。」
と、言ってしまった。言ってからしまったと思ったけど、おそかった。
それから、ムシされるようになった。だれもしゃべってくれない。給食当番もいっしょにしてくれない。桃子は、もともとおしゃべりはあんまり得意じゃないし、一人でいることも、わりに平気だった。でも、クラスのほとんどの女の子からムシされるのは、つらかった。
これが桃子の3年生のときの様子です。
しかし、4年生になって、瑞希ちゃんという友達ができます。
ずいぶん対照的ですね。ここから読み取れるテーマとして
「本当に大切な友達」
というのはどうでしょうか。
桃子は、ひとの悪口やうわさばっかりする人は好きではありません。そういう人と無理に仲良くするより、瑞希ちゃんのような友達を大切にするべきですね。
2つのテーマについて掘り下げる
中心テーマ「あやまる勇気」
おまけのテーマ「本当に大切な友達」
が決まりました。
どちらのテーマが書きやすいかは、人によると思います。
「おまけの方がたくさん書けそうだ」
と思ったら
中心テーマ「本当に大切な友達」
おまけのテーマ「あやまる勇気」
としても構いません。
読書感想文の書き方に「これが正解」というのはないことをいつも覚えておきましょう。
では、原稿用紙4枚ちょっとにするつもりで段落構成を考えます。
今回は、おまけテーマから入っていきます。
①本当に大切な友達
②私の失敗 その1
③私の失敗 その2
④桃子の気持ち
⑤走りだした桃子
①本当に大切な友達
から作ってみましょう。
例えば、こんな感じの書き出しを考えてみます。
M子とは、幼児園からずっと一緒でした。お母さんどうしも仲がいいので、しょっちゅう一緒に遊びます。
作文がそれほど得意でない子は、よくこういうところで筆が止まってしまいます。
そこで、筆が止まるのを防止する作戦の1つとして
「ボンヤリ・クッキリ法」
を紹介します。
「ボンヤリ・クッキリ法」で作文がいくらでも書けるようになろう
「ボンヤリ・クッキリ法」を使って書いた部品がこちらです。
茉莉子とは、幼児園からずっと一緒でした。お母さんどうしも仲がいいので、しょっちゅう一緒に遊びます。
たとえば、日曜日に一緒に公園に遊びにいったり、お買い物に行ったりします。
お互いの家に行って、ディズニーの映画を観たり、おもちゃで遊びながらずっとおしゃべりしていることもあります。
これからも、ずっと茉莉子とは仲よしでいたいと思っています。
②私の失敗 その1
1年前くらいに、茉莉子と口げんかになって、しばらく仲が悪いことがありました。しかし、お母さん同士は仲がいいままなので、日曜日とかになると茉莉子と会うことになります。口げんかしたことを、M子もあやまらなかったし、わたしも「ごめんね」とは言いませんでした。このときは、私のお母さんと茉莉子のお母さんが、
「いい加減に仲直りしなさい!」
と言ってきたので、私も茉莉子も
「ごめんなさい」
と言って、それからは元のように一緒に遊びました。
③私の失敗 その2
何が原因だったかは、忘れてしまいましたが、とにかく言い合いになってしまって、
「茉莉子なんか大嫌い」
と言ってしまいました。
すると茉莉子が泣いてしまいました。
茉莉子は、言い合いになっても、わたしのことを嫌いとは言いません。だから、私があやまるべきと思ったのですが、私は自分からあやまるのは損だと思いました。泣き虫な茉莉子が悪いと思いました。
でもやっぱり私が悪いと思ったので、茉莉子にごめんなさいを言いました。
すると茉莉子は、涙をいっぱいにうかべたまま笑顔になって、
「わたしもごめんなさい」
と言ってくれました。
④桃子の気持ち
「うそつき」
と言ってしまって、あっしまったと思ったと書いてあるのを見て、私が茉莉子に言ってしまったことを思い出しました。桃子と私はそっくりです。
だから、桃子がそのあと瑞希ちゃんにあやまらなければいけないと思った気持ちも、あのときの私とそっくりです。
桃子は、瑞希ちゃんがゆるしてくれるかどうか、自信がなくてなかなかあやまれませんでした。
でも、私は茉莉子とは幼稚園からずっと一緒にいるので、「ごめんね」と言ったら許してくれると思っていました。
私は茉莉子が友達でよかったと思います。
⑤走りだした桃子
私は、瑞希ちゃんは桃子のことを待っていると思います。瑞希ちゃんだって桃子と元通りに仲良くなりたいに決まっています。
私は、このお話を読んで、桃子と瑞希ちゃんが、私と茉莉子みたいではらはらしながら読んでいましたが、最後に桃子が走りだしてくれて、ほっとしました。私は茉莉子とずっと仲良くしていきたいと、あらためて思いました。
原稿用紙だとこんな感じになります
まとめ
今回は、『たぬきのダンス』(あさのあつこ)で読書感想文を書いてみました。
少し歯が浮くような感じになってしまいましたが、あくまでお手本なのでそのあたりはお許しください。
今回のポイントは2つです。
①中心人物の「葛藤」をとらえて、作品テーマをつかもう。
②「ボンヤリ・クッキリ法」を使って体験談をふくらまそう。
皆様の参考になれば幸いです。