
突然ですが、『蜘蛛の糸』で読書感想文を書きます。
これは、個人的には明日の授業のリハーサルです。
興味のある方はお付き合いください。
まずは、読書感想文を書く前に物語を要約しましょう。
今回は200字でやります。
地獄にいる大泥棒の犍陀多は、かつて生前に蜘蛛を助けたことがあった。極楽にいた仏さまは、そのことを思い出し、一本の蜘蛛の糸を垂らされた。犍陀多はその糸をつかんでよじ登りはじめるが、他の罪人たちも糸につかまって登ってきた。それを見た犍陀多は「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己のものだぞ。お前たちは一体誰に尋いて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と叫ぶ。すると、糸は切れてしまい、犍陀多はまた地獄に落ちた。
さて、ここから感想文の部品作りに入ります。
いくつかの手順を踏んで、感想文をなるべく一気に書き上げるための下準備をしましょう。
もくじ
1.まとめる
「まとめる」って、すでに要約したのにまだまとめるの?
と思われるかもしれません。
しかし、まあそう言わず、要約文をさらにまとめてみましょう。
次のまとめを見てください。
上から垂れてきた蜘蛛の糸につかまって登った犍陀多だが、糸が切れてしまい、また地獄に落ちた。
2.分解する
このシンプルなまとめを、今度は分解します。
①上から垂れてきた
②蜘蛛の糸
③登った犍陀多
④糸が切れた
⑤また地獄に落ちた
ここらへんは、深く考えず、簡単にやってください。
3.「なぜ」を考える
さきほどのまとめでは、①から⑤の要素に分解しました。
すべてについてなぜを考える必要はありません。
「なぜ?」と問いを立てたとき、その答えが浮かぶものについてやっていきます。
ここでは①から④について「なぜ」を考えてみましょう。
①上から垂れてきた ←お釈迦様が垂らしてくれたから。
②蜘蛛の糸 ←犍陀多が生前に蜘蛛を助けたことがあったから。
③登った犍陀多 ←地獄から出たかったから。
④糸が切れた ←糸をひとりじめしようとしたから。
これも、思いつく「なぜ」を簡単につけましょう。
4.感想をつける
「なぜ」を考えました。
ここでは、それらの「なぜ」に対して自分が抱く感想を書いてみましょう。
たとえば、こんな感じです。
①上から垂れてきた ←お釈迦様が垂らしてくれたから。
②蜘蛛の糸 ←犍陀多が生前に蜘蛛を助けたことがあったから。
地獄に落ちるほどの悪人である犍陀多なのに、
「蜘蛛を助けたことがある」というだけでお釈迦様が助けてくれるなんて、
優しすぎるのではないか。
③登った犍陀多 ←地獄から出たかったから。
④糸が切れた ←糸をひとりじめしようとしたから。
地獄から出られるチャンスは、たぶんもう来ないと思ったら、糸をひとりじめしたくなる気持ちは分かる。
しかも、自分のつかまっている糸が、何人までなら耐えられるか分からない。
5.抽象化する
「なぜ」に対して「感想」を付けたら、次はその感想を抽象化します。
①②についての感想
地獄に落ちるほどの悪人である犍陀多でさえ、「蜘蛛を助けたことがある」というだけでお釈迦様が助けてくれるなんて、優しすぎるのではないか。
【抽象化】↓↓↓
たくさん悪いことをした人が、ちょっといいことをしただけで助かるなんて不公平だ。
③④についての感想
地獄から出られるチャンスは、たぶんもう来ないと思ったら、糸をひとりじめしたくなる気持ちは分かる。しかも、自分のつかまっている糸が、何人までなら耐えられるか分からない。
【抽象化】↓↓↓
めぐってきた幸運やチャンスが、人と分かち合うことで消えるかもしれないと思ったら、それをひとりじめしたくなるものだ。
ここで、「①②」と「③④」では、感想が向かっている対象が違うことに気をつけましょう。
「優しすぎる」や「不公平だ」の感想は、お釈迦様へ向けたものです。
それに対して、「ひとりじめしたくなる」という感想は、犍陀多へ向かっています。
この話の中心人物は犍陀多なので、犍陀多へ向けた感想を、文章の中心に据えた方が無難です。
もちろん、お釈迦様へ向けた感想で書き切るのも悪くはありません。
ここは、無難に犍陀多への感想を中心に据えていきます。
6.『私は〇〇だ』で書き出す
ここでは、書き出しを決めると同時に、書き終わりが自動的に決まってしまう文章技術を紹介します。
それは、
『私は〇〇だ。』
という言い切りの形で書き始めるやり方です。
『〇〇』の場所には、いくつかのパターンが考えれます。
ア.中心人物を入れる
『私は犍陀多だ。』
イ.形容詞や形容動詞を入れる
『私は自分さえよければいいという人間だ。』
これをやることで、書き終わりがどうなるのかを説明します。
ア.『私は犍陀多だ。』で始まる場合
犍陀多のようにならないための心がけに、これから取り組んでいきます。
イ.『私は自分さえよければいいという人間だ。』で始まる場合
私は、これまでの自分本位のあり方から、もっと他者を思いやり、時には自分を後回しにする勇気を持つよう心がけていきます。
元の感想が1つなので、どちらにしても似たような終わり方にはなります。
ここで大切なのは、書き手自身の変化です。
読書感想文というのは、「読む前」「読んだ後」で自分がどのように変化したかを書くものです。
したがって、書き出しはなるべくマイナスからスタートした方が、最後を締めやすくなります。
7.(補足)他から引用する
『蜘蛛の糸』では、せっかくのチャンスをひとりじめしようとしたために、
そのチャンスを失ってしまった犍陀多の姿が描かれています。
ここからは、恐らく私の教室の生徒でないときつい話になるのですが、
私の☆教室で素読する日課の1つに『発願利生』がありますが、その冒頭部を紹介します。
菩提心を発(おこ)すというは、己れ未だ度(わた)らざる前に
一切衆生を度(わた)さんと発願(ほつがん)し営むなり
ようするに、「自分は後回しにしても、周りの人たちを助けなさい」という意味の一節です。
これは蜘蛛の糸をひとりじめしようとした犍陀多の行いとは真逆です。
この発願利生の教え通りに行動するとしたら、蜘蛛の糸を登ってきた他の罪人たちに
「自分はいいから、先に行きなさい」
となるでしょう。
もし、そのように行動していたら、お釈迦様は犍陀多を助けてくれていたかもしれません。★
さて、この☆~★の部分は、蜘蛛の糸の感想文にそのまま利用することができます。
おまけで紹介したように、他の作品からの引用を交ぜるとかっこよくなります。
まとめ
読書感想文を書く1~6のステップについて説明しました。
1 まとめる
2 分解する
3 「なぜ」を考える
4 感想をつける
5 抽象化する
6 書き出しを考える
7(補足)については、できる人だけでかまいません。
感想文の書き方は、さまざまな方法が紹介されています。
いろいろやってみて、自分に合う方法を身につけてください。